「バンクシー展 天才か反逆者か」 2021年2月3日―5月31日まで 旧名古屋ボストン美術館にて

「世界で100万人が心揺さぶられたバンクシーワールドが名古屋に初上陸」の呼び声に誘われて出かけていきました。

すべての作品の撮影OKとのこと。カメラを手に大いなる密状態の会場へ。

 

私がバンクシーを初めて知ったのは

「2018年10月5日《風船と少女》が老舗のオークションハウス「サザビーズ」で1億5000万円もの値段で落札された瞬間、バンクシー自らあらかじめ額に仕込んだ仕掛けによって、その場で裁断された」

この事件を新聞で見かけたときです。この事件、覚えていらっしゃいますか~?!

 

バンクシーはイギリス人。匿名で活動する特殊な覆面アーティストです。ストリートを中心に住宅地や地下鉄駅構内などの壁に落書きをします。時には著名な美術館や博物館に忍び込んで勝手に作品を展示するなど、世界中に数多くの“いたずら”を仕掛けてきた覆面アーティスト。公共の建物に落書きをすることは日本では不良の文化。なかなか浸透しなかったのですが。

 

いわゆるストリートアーティストは自分の信念やユーモアを街角などに落書きします。

それが今や芸術として「グラフィティ(落書き)」と呼ばれ億単位の値が付くのも出てきました。

 

バンクシーは、グラフィティ・アートという違法行為を手法にして、政治的なメッセージ性の強いものなどで大資本や権力に対する批判をしています。

これまで反金融資本主義、反グローバリズム、アンチ五輪、環境問題を提起するような作品を発表してきました。

 

★記憶に新しいのは、《Game Changer》という看護師の人形を手にした子供を描いたこの作品が、新型コロナウイルスと闘うサウサンプトン病院で展示されました。

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一緒に添えられた手紙によると、コロナの最前線で闘う医療従事者の献身や努力に捧げた感謝の気持ちとか。

既に作品の落札予想価格は約6億5000万円に上るという見立ても出ています。オークションに出品してNHS(国民医療サービス)に寄付するらしい。

 

 

★《Girl with Balloon 風船と少女》

ハート型の風船に手を伸ばす少女の絵柄は、ブラックユーモアや風刺の利いたバンクシーの作品群のなかでも、もっともストレートに愛や希望、無邪気さを描いた作品で、17年には「イギリス人が好きな芸術作品」ランキングで第1位にも選ばれたそうです。

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★2019年1月に東京・日の出駅近くの防潮扉で発見され、都が撤去した「バンクシー作品らしきネズミの絵」。

★「アンブレラ・ラット(傘を持つラット)」シリーズの作品では国民的キャラクター「メアリー・ポピンズ」のトレードマークである傘を手に空を飛ぶお話をもじっています。

たとえ地上を這う嫌われ者でも、傘を持って空へと高く飛べるはずというバンクシーの悲しいメッセージが込められているのかも・・・。

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バンクシーはネズミのモティーフをたびたび使っています。彼の描くラットはドブネズミで、病原菌をまき散らし家財や電線を食いちぎる害獣として忌み嫌われているものとか。

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バンクシーは、働けど働けど生活がラクにならない労働者階級である自分を、回し車の中でくるくると回り続けるラットレースのネズミにたとえたのか、

人目を盗んでいたずら(グラフィティ)描きを続ける自分自身をドブネズミに重ね合わせたのか、

イギリスだけでなく世界のあちこちにラットを描き残しているのです。

ラットはまさに“パブリック・エネミー(社会の敵)”であり、そこが作品のカギになっているように思えるのです。

 

 

 

★《Love Is In The Air》は圧倒的な武力のイスラエル軍に対して投石で対抗したパレスチナの人々を題材にしたもの。

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イスラエルの圧制による惨状が続くパレスチナパレスチナの人々を弾圧するイスラエル政府への抗議として描かれました。パレスチナ人の手には石のかわりに花束が握られています。

 

見終わって

天才か、反逆者かと問われましたが、たくさんの作品には一つ一つメッセージが込められ一概には答えられなかったです。

2,3日前テレビニュースでバンクシーの新しい作品が12億円の値が付いたと報道していました。

バンクシーって何者~?という問いが一層色濃くなりました。