中国映画「春江水暖(しゅんこうすいだん)」を見て~(^^♪

2021年に上映される美術映画が早くも次々と公開されています。

例えば「天才画家ダ・ヴィンチのすべて」、「レンブラントは誰の手に」、「フリーダ・カーロに魅せられて」、「ピカソピカソになるまで」、そしてこの「春江水暖」です。

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春江水暖

 

中国映画は珍しくて早速見に行ってきました。

しかもこの映画の珍しいところは、中国の古典絵画、元時代(日本の鎌倉、室町時代)の山水画巻の名品・黄公望(こうこうぼう)の『富春山居図巻(ふしゅんさんきょずかん)』(1347年)からインスピレーションを得たところです。

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富春山居図巻

この図巻は日本でいえば雪舟の国宝『山水長巻』(四季山水図)のようなものです。山水画巻の楽しいところは、山や川、季節ごとの木々の彩り、そして添景として庶民の生業、年中行事などを画巻の中の旅人と一緒に自分も旅人になった気分でたどることができるところ。

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雪舟「山水長巻(四季山水図)」

 

中国・江南の都市、富陽に流れる富春江という大河を中心に、大規模な再開発によって日々姿かたちを変えるこの地で、四季折々の自然とともに生きている、中国の伝統社会を象徴する「大家族」の物語です。2時間半という長い映画。内容そのものは様々な困難に直面しながら頑張って生きるちょっと暗めの物語。

 

ここはいにしえより景勝地として愛されてきた土地だけに、とりわけ大河や山々が映り込むショットは驚異的な映像美で圧巻のひとこと。

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夏のシーン

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冬のショット

大画面に吸い込まれるように川の流れに身を任せ、いつしか自分がたゆたっているかのような気分になりました。

 

劇中後半辺りにジャン先生が教材として生徒に山水画巻『富春山居図巻』を写し出すシーンと日常の人々の声や生活の音も流れてくるシーンでは、山水画巻と見事に溶け合い、現実との境が分からなくなる様な錯覚に陥ってしまいました。

 

まだ30代というグー・シャオガン監督(1988年生まれ)は少年時代からインターネットで様々な映画を見ることができた新世代の監督。その長編映画第1作が2019年カンヌ映画祭、批評家週間のクロージング作品に、いきなりの大抜擢。今後が楽しみな監督ですね。