名古屋市博物館「大雅と蕪村―文人画の大成者―」展に行ってきました~♪

江戸時代に活躍した二人、池大雅(いけのたいが)(1723-76)と与謝蕪村(よさぶそん)(1716-83)の魅力に触れる展覧会です。

以前から教科書でしか見たことがない国宝『十便十宜図(じゅうべんじゅうぎず)』が出展されているのを知って出かけてきました。

ところがこの作品は、画帖というアルバムのような形式になっており、会場では全体を公開するのではなく5~6日置に各1図ずつ2面の展示です。残念ですが全面(20面)を見ることが出来ません。小さなしおりをいただきましたのでそこからお写真を撮りました。

『十便十宜図』とは・・・
10の便利なこと「十便図」、10のよろしきこと「十宜図」って、なんと楽し気な題材なのでしょう。
それもそのはず、テーマの「十便十宜」とは、中国・清初期の戯曲家、文人・李漁(1611-80)の別荘・伊園での生活ぶりを歌った漢詩の連作なのです。
十便のほうは池大雅が描き、伊園の暮らしやすさを、十宜のほうは与謝蕪村の筆で周りの自然の美しさを歌っています。

 

実はこの作品、長い間、名古屋鳴海宿(現在の緑区)の豪商・下郷学海(しもざとがっかい)(1742~90)が所蔵していました。今はあの有名な作家・川端康成の所蔵です。大雅と蕪村二人の競演の名作。誕生から250年を記念して名古屋にお里帰りしたとのことです。

まず池大雅(1723-76)が描いた「十便図」から。

池大雅筆「十便図」

f:id:akikasugai:20220115113933j:plain

1耕便図(こうべんず) 家のすぐそばに水田があるから耕作するのに便利!

2課農便図(かのうべんず) 家の窓からのんびりと農作業の様子を眺めることができるので便利!

f:id:akikasugai:20220115113605j:plain

3釣便図(ちょうべんず) 家の中から釣りができるので便利!
 4灌園便図(かんえんべんず) 畑の傍らにため池を作ったので水やりに便利!

f:id:akikasugai:20220115113544j:plain

5汲便図(きゅうべんず) 台所の近くに滝があり、竹の樋で水を引いているので茶を入れるのに便利!
6浣濯便図(かんたくべんず)洗濯をするのに谷川まで行かなくても、清流が門の中に流れているので便利!

f:id:akikasugai:20220115113517j:plain

7樵便図(しょうべんず) 家の外は山の中。枝葉を拾い集めるのに便利!
 8防夜便図(ぼうやべんず) 家の周りは泉の流れが巡っている。夕方になると橋を引き上げるので夜の防犯に便利!

f:id:akikasugai:20220115113911j:plain

9吟便図(ぎんべんず) 窓を開けると山々を望むことができ、詩想が自然と浮かんでくる。詩を詠むのに便利!
10眺便図(ちょうべんず)自然を眺め楽しむのに便利!

 

与謝蕪村筆「十宜図」

f:id:akikasugai:20220115113829j:plain

1宜春図(ぎしゅんず) ため池の周りに桃と柳が植えてある。春には美しい緑と赤いももの花。この家は春に宜し。 
2宜夏図(ぎかず) 家の周りの木々は太陽の暑さを遮り涼しい。この家は夏に宜し。

f:id:akikasugai:20220115113756j:plain

3宜秋図(ぎしゅうず) 秋になると木々が色づき錦の帳のよう。この家は秋に宜し。

4宜冬図(ぎとうず) 家を囲む樹木は冬の寒さを防いでくれる。この家は冬に宜し。

f:id:akikasugai:20220115113728j:plain

5宜暁図(ぎきょうず) 池に反射した朝日が壁に美しい波紋を映し出す。この家は暁の時分に宜し。

6宜晩図(ぎばんず) 夜、月の明かりが静かに辺りを照らす。この家は晩の時分が宜し。

f:id:akikasugai:20220115113700j:plain

7宜晴図(ぎせいず) 晴れた日は山々の濃淡が美しい。わざわざ山水画を見るまでもない。この家は晴れの日に宜し。

8宜陰図(ぎいんず) 山々に霧が立ち込めている。こんな時こそ良い詩が生まれてくる。この家は曇り日に宜し。

f:id:akikasugai:20220115113629j:plain

9宜雨図(ぎうず) 木々を打つ雨。樵は仕事にならないけれど詩人の私は趣深い。この家は雨の日に宜し。
10宜風図(ぎふうず)風に吹かれて花の香りは混ざり合う。松のこずえの音、水面の波紋。この家は風の日に宜し。

二人の絵のうちどちらがお気に入りでしょうか~?

池大雅は山登りが好きで、のびのびとした筆遣いや構図の面白さ、味わいのある絵になっていますね。

与謝蕪村は「俳画」でも有名ですが、絵を見てわかるように朝と晩、春と夏、秋と冬など季節や時間、天候によって移り変わる自然のさまざまの表情を情感あふれる繊細な感性で描いています。

 

その他にも

池大雅筆 国宝「楼閣山水図屏風」東京国立博物館所蔵

f:id:akikasugai:20220117160218g:plain

与謝蕪村(よさぶそん)の傑作、国宝「夜色楼台図」個人蔵

f:id:akikasugai:20220117160247j:plain

など見応えのある作品が出ています。展示期間がまちまちで全部を見ることができなかったのですが・・・。