曰く
今、あきらかにされる明治期の幻の大画家
曰く
海外を魅了した最初の日本画家
今、最も評価されるべき、忘れ去られた日本画家、渡辺省亭(せいてい)(1852-1918)を絶賛する数々の呼びかけ!
さてこのように声をかけられたら行って自分の目で確かめたくなり岡崎市まで行ってきました。
明治から大正にかけて活躍した画家が、なんとこの展覧会が初回顧展なのです。
私も初めて聞く画家なので資料がありません。
図録、展覧会チラシなどを要約してご紹介します。
渡辺省亭は嘉永5年(1852)幕末の江戸・神田(現在の千代田区神田佐久間町四丁目)生まれ。日本画家として初めてパリに渡航した数年を除いては、生涯を浅草界隈で過ごした。
1878年第3回パリ万国博覧会に省亭も参加。日本画家として初めての渡欧。
現地の日本美術愛好家が集まった時のこと、その場で絵を描き(席画)参加者たちを驚かせた。省亭は海外を魅了した最初の日本画家となり、海外で高く評価されたのです。
また迎賓館赤坂離宮の花鳥の間を飾る七宝額の原画30点を描いた人。日本画家として数々の功績を残しながら一般にはあまり知られていないのです。
では何故省亭は忘れ去られたのでしょう。
省亭は弟子も取らず、明治30年ころから画壇と距離を置き、展覧会に出展しなくなったため、歴史のはざまに埋もれ、紹介される機会が少なくなってしまったとか。(展覧会チラシより)
今回の展覧会では海外からの里帰り作品やこれまであまり知られてこなかった個人コレクションを中心に省亭の生涯と作品の魅力を紹介しています。
それではなにはともあれ絵のご紹介を。
★《牡丹に蝶の図》明治26年 個人蔵
花びらの立体感を薄紅色のグラデーションと陰影で表現しています。
何枚もの花びらを重ねながら咲き誇る牡丹の花がうっとりするほど美しい!
グラデーションで立体感を出すという省亭独自の画風。これは伝統的な日本画法に西洋で培った画法をプラスしたもの。
★《雪中群鶏図》明治26年(1893) 東京国立博物館蔵
シカゴ万博出品作品
鶏の鶏冠から羽根まで絶妙なグラデーションで描かれています。
鶏の目が怖いほど生々しくリアル。
トサカの色調に濃淡をつけることで厚みを出し立体感を出しています。
羽根は絵の具をぼかして柔らかい質感を表現しています。
★水墨画《群猿》個人蔵
猿のふさふさとした毛、もふもふで思わず手を差し出して触りそうに~。体温まで感じさせます。写実的な顔の描写、手足もほんとにリアル。私の一番好きな絵になりました。
★《十二ヶ月花鳥図》より《三月 桜下雉子》(部分)
つがいの雉子。鋭い眼光を放つ雉子の目、細かな羽根の形、微妙な色の変化など質感の違いを圧倒的な描写力で描き分けています。
その足元にはタンポポやスミレ、ツクシなど、春の草。頭上には散りゆく山桜。細部まで丁寧に描きこんでいます。お見事!
★迎賓館赤坂離宮の花鳥の間の仕事
花鳥の間を飾る七宝の額の下絵を担当するなど、日本画家として数々の功績を残しながら、一般にはあまり知られていませんでした。
七宝額原画《駒鳥に藤》東京国立博物館蔵
濤川惣助(なみかわそうすけ)作 七宝額30面のうち。
七宝とは思えないほど色鮮やかで濃密な世界を描いています。この宮殿にふさわしい気品を備えています。
★先月発見された作品《春の野邊》(絶筆)
省亭の最後の作品が、日曜美術館を見た遺族から申し出があり岡崎市で展示されました。
白く見える蝶2羽が下塗りのままで未完になっています。
省亭は花鳥画のほかにも人物を含めた風俗画も得意。江戸っ子らしい粋な情景を描いています。
★《四季江戸名所》冬 墨堤の雪(向かって左)、夏 不忍池蓮(右)
★《桜下美人之図》明治30年(1897)グレース・ツムギ・ファインアート蔵
繊細で気品のある優れた美人画家でもあったのですね。息をのむような、匂い立つような美しい女性像。
見終わって、前宣伝がほんとだったと感動しています。
久し振りに気品があり、優美な日本画に出会えました。
どんな小さなものでも手を抜かず丁寧に描きこみ、よくよく観察、例えば蝶の銀粉まで描いていることに驚いています。
生きものたち
省亭の生き物たちへの愛情さえ感じられる作品を~~~!もう少しだけ。
この蜘蛛はわずか5ミリくらい。小さいものでも陰影までつけて丁寧に描いています。