2023年10月 建仁寺「スミソニアン国立アジア美術館の名宝展」に行ってきました~(^^♪

皆様ご存じのように、建仁寺には素晴らしい障壁画や天井画、お庭などが拝観できますね。

7月には元総理・細川氏の《瀟湘八景図》を拝見するためにお訪ねしました。

10月には高精彩による日本の名画がお里帰りしていましたので再び訪れました。

日本に残っていたならば国宝級の作品ばかりです。

まさに日本という国をよく知ってもらえる「外交官の役目をする絵画たち」なのです。

この中でも長年見たくてたまらなかった俵屋宗達の《松島図屏風》が来ていました。

高精細とはいえ実物と寸分たがわない、しかも撮影フリーのこのチャンスを待っていたのでした。ほんの一部ですがご紹介したいと思います。

俵屋宗達筆《松島図屏風》(江戸時代17世紀)縦152×横355.7㎝

左隻

右隻

参考資料

六曲一双の右隻には岩の切り立つ荒磯が、左隻には州浜に群生する松や浮き雲が描かれています。美しい金泥と墨で描かれた波のうねりに惹きつけられました。

阪堺の豪商・谷正安の注文で作成され、堺の祥雲寺に寄贈されたもの。

1906年(明治39年)にアメリカ・フリーア美術館に渡りました。

大きな作品で後ろに下がっても全体を写すことが出来ず、お粗末なお写真になってしまいました。

俵屋宗達筆《扇面散図屏風》江戸時代17世紀 六曲一双 縦154.5×横362cm

宗達はその当時ファッションアイテムだった扇子屋を営んでいた商人でしたが、これらの扇子で名声を得て有名な絵師になりました。まさに才能のある芸術家、天才だったのです。

葛飾北斎筆《富嶽図》江戸時代19世紀

北斎80歳の作品

柳の大木に腰掛け、笛を吹く童子雄大な富士山。

富士山の絵をたくさん描いている北斎は、この山に長寿の願いを込めているのでしょうか。

良い絵だと思いませんか~?私は大好きな絵です。

1898年に明治政府のお雇い学者・フェノロサからスミソニアン国立アジア美術館が購入しました。スミソニアンは世界最大の北斎コレクションを誇っています。

葛飾北斎筆《富士田園景図》江戸時代19世紀 六曲一双 縦150.6×351.0cm(部分)

はるかに富士山をのぞむ田園風景ですが、やはり大きすぎて全体を撮ることが出来ませんでした。

この屏風は豊かな色彩に金彩を施した豪華な屏風です。

この時代の多種多様な生活が描かれています。

1902年にフリーア美術館がフェノロサとその妻から左右隻を別々に購入したそうです。

 

日本では見ることが出来ない作品です。
ネツ、素晴らしい絵ばかりでしょ!!!

2023年10月「東福寺」展 京都国立博物館に行ってきました~~~(^^♪

新緑や紅葉の名所として知られる東福寺塔頭も多く何度も訪れたことがあります。

そのお寺の名前の由来をこの展覧会で初めて知りました。

それは奈良の大寺のように広大に、興寺のように栄えるようにと、東と福の一文字づつをとって東福寺と名付けられたそうです。ご存じでした~?!

 

東福寺」は、鎌倉時代に創建された京都を代表する禅寺の1つです。

聖一国師(しょういちこくし)と呼ばれる、大陸・中国(南宋)に留学した高僧・円爾(えんに)(1202~80)によって開かれました。

 

禅を学んだ円爾(えんに)は、日本でも中国でも大人物と認められ、皆に慕われた人だそうです。うどん、そば、まんじゅうなどを持ち帰ったとのことです。

 

この展覧会では応仁の乱による戦火を免れた貴重な文化財が出展されています。

例えば「伽藍づら」と言われる巨大なお寺にふさわしい、巨大仏像や長い間秘められてきた書画骨董と言った普段表に出たことがない寺宝です。


その中でも私が最も期待したのは、雪舟に並ぶ「画聖」とも崇められた


「絵仏師・吉山明兆(きっさん みんちょう)」(1352~1431)による大作

★「五百羅漢図」全幅50幅(復元模写も含む)と

★仏像群でした。

 

ほんの一部ですがご紹介したいと思います。

なお解説はすべて公式サイトから要約しました。

それぞれ一幅の大きさはおよそ170cm、横幅90cmです。

 

「五百羅漢図」とは

「羅漢(らかん)」はサンスクリット語で「お布施を受ける人、尊敬を集める人」の意味がもとになっていて、仏教で最高の修行を修めた聖者のこと。

500人もの釈迦の弟子たちを10人ずつ50幅の掛け軸に分けて描いた作品で、室町時代の絵師、吉山 明兆(きっさん みんちょう)の代表作です。

現存する最初にして最大級の作品がこの五百羅漢図シリーズです。

明兆はこれを自分で発願して、何年もかけて35歳の年(至徳3年、1386)に完成させました。

 

去年(2022年)300年ぶりに、14年かけて修復、完成。

全50幅が一挙公開されるのは初めてなのです。ただし4期に分けての公開で、私は第1期公開、(1号幅から12号幅、46号幅、50号幅(復元模写)、10月7日~22日まで)に行ってきました。

ただし、46、47、50号は明兆の原図をもとに後世に作成されたものです。

 

個性豊かでユーモアたっぷりの聖なる羅漢さん!眉毛が長かったり、頭の形が~おかしかったり?!

修行で得た不思議なパワー、神通力を発揮して、驚きの奇跡を起こす。

水墨の技と極彩色が見事に使い分けられ、弟子たちが修行する様子が色鮮やかに描かれています。着衣の文様など一人として同じものがありません。

リアルでビビッドな中国最先端の仏画とのことです。

墨の線の面白さ、色使いの鮮やかさ、スケールなどいろんな点で明兆の、そして室町時代仏画の記念碑といって良い作品だそうです。

 

★第1号幅【燃えない経典】羅漢さんの法力で、仏教の経典は火の中でも燃えずに光を放った。どうや!と自慢げな羅漢さんも。何故じゃ~道教経典は燃え尽きたのに~。

第1号

燃え盛る経典

燃えなかったので嬉しそうな羅漢さん!

道教経典が燃えているので道士はオロオロ~!

★第2号幅【黄金の塔、出現!】 羅漢さんたちが香を焚くと、地面の中から黄金の塔が現れた。中にはお釈迦さまが!

第2号

黄金の塔の中にはお釈迦さまが!

★第3号幅【顔を割いたら…】 和尚さまが顔を割くと、その下からは十一面観音。周りにはその姿を描き取ろうとする絵師たちも。

第3号

★第4号幅【足を踏み外した】 真夜中の道行き。うっかり足を踏み外したところ、その足を支えてくれたのは何と毘沙門天の子・那叱(なた)!

第4号

★第5号幅【羅漢さまご一行、ようこそ龍宮へ】 海の中では龍王の妻と娘が敷物を広げてお出迎え。

第5号

第5号の裏側

左:表 右:裏彩色の技法

★第6号幅【餓鬼たちとお団子?】 口から火をはく餓鬼たちに、三色団子のような食べ物を施す羅漢さん。お味はいかが?

第6号

★7号幅【空からお金が降ってきた】破れた衣をまとった貧しい人々が、空から降ってきたお金を我先にと拾う。どこからわき出たお金なの?

第7号

お金を拾う貧しい人たち

 

★第8号幅【地獄から救って】地獄には針山や炎。羅漢さんが水を垂らすと、地獄に蓮の花が開いた。

第8号

第8号(部分)羅漢さんが水を垂らすと・・・

第8号(部分)地獄の蓮の花が開いた~~~

★9号幅【手から上がる不思議な煙】香を焚くと、羅漢さんの手から5すじの不思議な煙が立ち上る。苦しみの世界から救ってくれる煙だ。

第9号

★第10号幅【戦で亡くなった幽霊たち】 羅漢さんたちが香や蝋燭などを用意している。戦争で亡くなった幽霊たちを供養する。

第10号

第10号(部分)後ろのほうにうっすらと幽霊が・・・


★11号幅【羅漢たちの勉強会】机の前で説法する羅漢さん。それを筆記したり議論したり。熱心な勉強会だ。

12号幅【きょうは滝見物】 滝の見物に来た羅漢の前に現れたのは水神(すいじん)。旗が格好いい!

12号

第12号(マンガから)

★46号幅 狩野元信筆【鬼たち塔を組み立てる】鬼たちを自由自在に使役するのも羅漢さんの神通力。羅漢さんの指示のもと塔を組み立てる。

★第50号幅 復元模写【龍の目の治療】 龍の目にゴミが入ってしまったようだ。取り除いてあげる羅漢さん。小瓶の目薬もさすの?

第50号(復元模写)

第50号(部分)目薬(右上の白いびん)は~?


羅漢さんの日常生活

(第20号幅)】【獣に乗ってお出かけ】 虎や獅子、鹿、そして象に乗って羅漢さんたちがお出かけ。その神通力には鬼も感服?!

第20号から(部分)

羅漢さんの乗り物 獅子

 

第20号から 駱駝に乗って

第34号【信仰の証拠に…】信仰の深さを示そうと、腕に焼香する人が現れた。「あまり無理をしないでね」と心配そう~~~。

 

 

第35号【蓮の花を飾ろう】 白と赤の蓮の花を摘んでいる。堂内では花瓶も置かれ、飾る準備は万端だ。

第35号から 【蓮の花を飾ろう】

第39号【さあ散髪だ】 髪をそってもらう羅漢さん。周りから見られないよう、そっと袈裟を広げて目隠しする気配りも。

第40号【入浴タイム】 太鼓の音は入浴の合図。みんなで浴室に向かう。風呂上がりの水分補給にお茶も用意されている。

第40号から【入浴タイム】合図は太鼓で!

第41号【阿弥陀さまの絵を拝もう】 阿弥陀さまが描かれた掛け軸を掛ける羅漢さんたち。香炉も用意され、これから儀式が始まる。

 

第42号【観音さまの絵も拝もう】 観音さまの描かれた掛け軸もある。水墨の白衣観音図だ。なにやらこの絵について語る羅漢さんも。

第43号【あーさっぱりした】 羅漢さんたちが耳掃除やひげそりなどをしている。気持ちよさげな表情が面白い。

耳掃除

髭剃り

明兆のその他の作品

室町時代東福寺で巨大な壁画や仏画を大量に描きました。

重要文化財白衣観音図」室町時代15世紀 縦3㍍26㌢、横2㍍81㌢

白衣観音図」

華厳経』に出てくる有名な場面。

左下の少年のような容姿なのは、善財童子(ぜんざいどうじ)

善財童子(ぜんざいどうじ)

童子文殊菩薩の説法に導かれて53の善知識を訪問し、菩薩行を体得したと『華厳経(けごんきょう)』に記されている。

龍は水を司る龍神

洞窟の中、打ち寄せる荒波をものともせず、座禅を組む白衣観音

力強く洞窟や波濤を表現した筆の勢い、岩や衣の自由自在で豊かな水墨の線が見事。

岩の線、波の線が極太で激しい。

荒波の中で坐禅をしている観音さまは、補陀落山(ふだらくせん)という南海にうかぶ聖地に現れると考えられている。

 

仏像

★「監斎使者」「掌簿判官」

ユニークなお顔のこのお像は東福寺の本堂に安置されています。 走っているポーズのほうが「監斎使者」、巻物と筆をもつお像が「掌簿判官」です。 掌簿判官の像内の墨書銘には「定祐」という仏師の名前と「嘉吉元年(1441)五月二日」の日付が記されています。

★四天王立像 鎌倉時代・13世紀

本堂の本尊・釈迦如来立像を守護する存在として、本尊前に安置されています。 本尊や迦葉・阿難立像同様、山内の塔頭・三聖寺から移されたものです。

写実的でとてもかっこいい。

造られた時期に差があって、多聞天鎌倉時代初期、他の像より一回り小さい。運慶の作風に近く、特に注目されている像

多聞天立像

増長天は中期、持国天広目天は中期から後期。

 

重要文化財 迦葉(かしょう)・阿難(あなん)立像 鎌倉時代(13世紀)

本尊・釈迦如来立像の脇侍として、本堂に安置されています。

 両像とも高さ2m近い大作で、中国・宋時代の美術から影響を受けてツメが長い。

釈迦より年長で教団を継承した迦葉(かしょう)は「頭陀第一(ずだだいいち)」と言われ、身なりを気にせずに仏道修行に励んだひと。お釈迦様から、「もう年なのだから、もっと軽い衣を着けて体を休めるように」と。

年老いて皮膚がたるみ血管が浮き出ている迫真の表現。

阿難はお釈迦様の教えを最もよく記憶したので「多聞第一(たもんだいいち)」と言われた。お釈迦様が亡くなるまで、25年間付き人をしていました。

阿難は親切で美男子だったから、とても女性にモテたとか。お釈迦様からあまり肌を露出しないように言われたので、迦葉に比べてちゃんと肌を隠しています。

阿難

重要文化財「ニ天王立像」鎌倉時代・13世紀

 

二天像は、阿形と吽形を一対にして、寺院の門や本尊の両脇で仏の世界を守る役割を担っている。この二天像の大きさは 3.4m。たくましい体に甲冑を着けて、腰をぐっとひねり、力強く邪鬼を踏みつけています。とても強そう!

高さ3mを超える巨像で、とくに衣の表現はダイナミック。

「伽藍面(がらんづら)」と称された東福寺の壮大なスケールが、巨大彫刻からも感じられます。

 

重要文化財 金剛力士立像(阿形)(吽形) 京都・万寿寺所蔵

右手の指でマルを作っているこのポーズは、意外と珍しく奈良・東大寺南大門の金剛力士立像、三重・府南寺(ふなんじ)の像も右手の指で丸を作っている。持物の金剛杵(こんごうしょ)の持ち方も共通している。金剛力士像は、通常は正面を向いて左側に阿形像、右側に吽形像を置くが、この像は逆。その点も東大寺南大門の像と共通している。それゆえ慶派仏師の制作かも。

 

東福寺には南北朝時代に作られた座高7.5mもある巨大な本尊 釈迦如来坐像があり、その仏手。

焼失した御本尊の左手

明治14年(1881)にご本尊のある仏殿含めて、中心部分が焼けたが、いくつかパーツが焼け残った。これはその左手。この手だけで2m以上もある。

親指と人差し指の間には縵網相(まんもうそう)。

光背化仏(こうはいけぶつ)がこの大きさ!

光背の化仏(こうはいけぶつ)

 

2023年10月東大寺開山初代別当良弁僧正・1250年御遠忌(16日)に行ってきました~(^^♪

その1法要

かねてから一度拝見したいと思っていました東大寺の法要に行ってきました。

 

午前10時過ぎから大仏殿前庭で法要があり、舞楽、伎楽や献花、献茶などが華やかに行われ、僧正の遺徳をしのぶことが出来ました。

秋晴れに恵まれた大仏殿

次々に入場する参加者たち

 

この大きな太鼓の響きは荘厳そのものでした。

 

良弁僧正(689∼773)は聖武天皇を支え、東大寺の創建に尽力し、751年の大仏開眼供養後に初代別当を任ぜられました。

僧正は、いかに正しく華厳経を理解して日本の人々に伝えることができるかを問い、講説され「本朝華厳の初祖」とも呼ばれた人です。(東大寺HPより要約)

良弁僧正像 木造 像高92.4cm 平安時代

午後からは関連行事を~

★10月1日〜16日まで法華堂で「秘仏国宝の執金剛神立像特別開扉」。

執金剛神(しゅこんごうしん)とは金剛杵(こんごうしょ)を執って仏法を守護する神です。

通常1年に1日(12月16日)だけ開扉される法華堂(三月堂)の執金剛神立像を特別に結願の16日まで公開です。

国宝 執金剛神立像 木造 像高173cm 奈良時代

東京藝術大学 執金剛神立像復元 模刻像

法華堂で1250年御遠忌の特別な切り絵の御朱印をいただきました。

 

★10月1日から戒壇堂四天王立像の拝観再開。それにともない千手堂拝観は終了。

四天王は四方を守る護法神として、戒壇堂の壇上四隅に立っています。

戒壇堂四天王立像 木造 像高 天平時代

 

秋空のもと、広い東大寺のお庭をあちこちゆっくりと拝観!

特に秘仏国宝の執金剛神立像には初めて実物にお会い出来、感激ひとしおでした。

夜には1250年記念の奉納公演です。

その2 夜の慶讃奉納公演 狂言

東大寺狂言野村万作・萬斎・裕基、狂言三代〜」

一旦ホテルに帰り夜の冷え込みに備えて、夕食を済ませ厚着をし準備完了。

再び大仏殿へ~~~!

夜の東大寺大仏殿 舞台

 狂言の番組(チラシより)

狂言「木六駄(きろくだ)」

太郎冠者 野村万作人間国宝

茶屋 野村萬斎 など

要約:降りしきる雪の中、蓑笠を付け、一本の追竹だけで十二頭の牛を追う太郎冠者の演技が見どころ。また酒宴の際に酔態で舞う「鶉舞(うずらまい)」など庶民の生活感情が豊かに描かれています。

狂言「茸(くさびら)」

山伏 野村裕基(万作氏の孫)とその他大勢(キノコ役)

屋敷中にキノコが生えて困っている男に、キノコ退治を頼まれた山伏。笠を被り面をつけたカラフルなキノコたちが、舞台上をところ狭しと動き回ります。海外でも上演されることの多い、荒唐無稽な狂言の代表作。
可愛らしいキノコたちに拍手喝采でした。。

ラヴェル作曲「ボレロ

野村萬斎

演奏:The Symphonic Orchestra

野村萬斎が長年の構想を経て、各所で好評を博しているプログラム。ラヴェルの舞踏音楽「ボレロ」と『三番叟』を軸とする珠玉の独舞。

素晴しい迫力でさすが!!!息をするのも忘れそうに魅入りました。

一日中、東大寺を楽しみました。厳かで、華やかな5色の旗や幕などに彩られた法要、色鮮やかな衣装の舞楽などとても美しかったです。

初めて尽くしのことばかりで記憶に残る素晴らしい1日になりました。

また東大寺初めての試みとして、10月28日〜11月19日には、かつて華厳経の講義が行われていたであろう法華堂に、国宝・良弁僧正坐像を論議台に安置し、特別拝観が行われるそうです。

2023年9月水木しげる生誕100 周年記念「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展~お化けたちはこうして生まれた~」名古屋市博物館~(^^♪

今夏は9月になっても暑い日が続いています。少しお化けのお話でひんやりしたいと「百鬼夜行展」に行ってきました。

この展覧会は、水木しげるさんの生誕100年記念です。妖怪たちが酷暑の名古屋に勢ぞろい!!!

水木さんはご自身を妖怪文化人と仰っています。

妖怪は怪獣のように作り出されるべきではない!昔の人たちが残した遺産だ!妖怪の型を後世に残さなければならない。

故に水木さんの妖怪は、大昔から伝えられた妖怪たちをもとに描かれています。また幼い頃、近所の「のんのんばあ」から聞かされた数々の不思議なお話や南方戦線に送られ、ジャングルの中で体験した怪異現象のエピソードなどが創作の秘密です。

例えば、彼の描く妖怪たちの元本は

奈良時代では『古事記』や『日本書紀』に出てくる天狗、鬼、人魚、狢(むじな)など。平安時代は『今昔物語』から、鎌倉時代は『明月記』から、室町時代では『大江山絵詞』、酒呑童子、土蜘蛛草紙などから、江戸時代では浮世絵絵師・鳥山石燕版本『画図百鬼夜行』、葛飾北斎の「百物語」、歌川国芳の「相馬の古内裏」など、明治時代では小泉八雲著『怪談』、柳田邦男著『妖怪談義』などたくさんの資料を読み、学び、イメージして制作しています。

今回の展覧会にもフォトスポットが用意されていましたのでお写真をアップしてみます。

★がしゃどくろ→歌川国芳の浮世絵「相馬の古内裏」より。戦死者や野垂れ死にした骸骨が怨念で巨大化。ガシャガシャと野をさまよう妖怪。

★べとべとさん→奈良・宇陀郡に伝わる妖怪。道を歩いていると後ろから足音が!脇によって「べとべとさん、先へおこし」と云うと足音がしなくなる。

一反もめん→鹿児島に伝わる妖怪。10mほどの白い布。空を飛び時には人を襲う妖怪。

★塗り壁→福岡県に伝わる妖怪。夜道を歩いていると急に壁にぶち当たり動けなくなる。目がキョロキョロと動く愛嬌のある妖怪。手も足もある。「ゲゲゲの鬼太郎」に登場。

砂かけ婆奈良県の妖怪。神社の森陰に潜んで、通る人に砂をバラバラっと掛け脅かす妖怪。

★児啼爺(こなきじじい)→徳島県に伝わる妖怪。赤ん坊の泣き声がするので抱き上げるとしがみついて離れない。しまいにはその人の命を取ってしまう妖怪。

★あかなめ→鳥山石燕版本『画図百鬼夜行』より。風呂桶の垢をなめる妖怪。誰もいない夜に出る。

★アマビエ→熊本県の海に出る妖怪。「病気が流行ったら私の写しを早々と見せよ」。コロナウイルスの時大流行したのは、これだったのかしら?

93年に渡る生涯の中で、日本の妖怪だけで1000点近くの妖怪画を描いたと言われています。ほんの一部をご紹介しました。

どの妖怪も夕方や夜に出るようです。怖い、怖い、怖い~~~!

水木さんは「妖怪の中にむかしの人々の気持ちが、いろいろ込められているような気がしてならない」と・・・皆様は如何ですか?!

2023年8月「マリー・ローランサンとモード」展 名古屋市美術館~(^^♪

マリー・ローランサン(1883年~1956)の生誕140年記念展に行ってきました。

彼女は画家としてのみならず舞台美術、室内装飾、挿絵画家としても活躍しました。日本人では藤田嗣治などで有名なエコール・ド・パリ時代に活躍した女性です。

ローランサンは女らしい美をひたすら追求し、社交界の女性たちを繊細優美に描いた肖像画で一躍有名になりました。

第一次世界大戦後、女性の社会進出や都市に花開いた文化を背景に、短髪のヘアスタイルにシンプルなシルエットのドレスをまとった女性が街を闊歩しました。

ローランサンと同じ年に生まれたココ・シャネル(1883年~1971)がデザイナーとしてモダン・ファッションの世界に取り組んだのです。女性は堅苦しいコルセットやたくさんのフリルの付いたロングドレスから解放されました。女性服は大きく変化を遂げたのです。

シャネルは帽子のデザインも素晴らしい!!!

デイ・スーツ

 

今回は画家・ローランサンとデザイナー・シャネルの新たなモードが見事に融合した軌跡を見ることが出来るものでした。

会場最後にうっとりする美しいパリ・コレクションの映像が流れ、一度は着てみたい!と憧れました。

2023年6月「ルーヴル美術館展 愛を描く」-ルーヴルには愛がある―京都市・京セラ美術館9月24日まで~♪

今回の展覧会のテーマは「愛」。

さて、愛と言ってもどんな「愛」?

思いつく「愛」は、恋愛、性愛、家族愛、神への愛(信仰心)などなどたくさんあります。

この展覧会では愛をどのように表現するのか・・・

それぞれの作品に物語が込められていますので、暗喩や神話をうっかり見落とすと意味が分からなくなる!だから西洋美術は面倒くさい!!!(笑)

故に・・・

ルーヴル美術館から届いた73点の美しい絵画の中からほんの少しだけお話したいと思います。

 

プロローグから

「神の愛」

★フランソワ・ブーシェ《アモルの標的》(1758)ロココ時代を代表する画家

今回の目玉作品のうちの一枚です。チラシを飾っています。

アモルは愛の神です。別名はギリシア神話では「エロス」、ローマ神話では「キューピッド」と呼ばれています。(ややこしい!)

古代神話によれば愛の女神ヴィーナスの息子・アモル(キューピッド)が放った矢が命中した時が「愛が誕生した瞬間」ですって。(なんてロマンティックなんでしょう!)

 

・この絵の上のほうのアモル(キューピッド)は高潔な愛で結ばれた恋人たちに授ける月桂冠を持っています。

・ハートの的を外れてしまうこともあります。ということは命中するまで何度もチャレンジ出来るということですね。真実の愛が見つかるまで~~~!

・つがいの鳩はパートナーを変えないということの象徴。

・下のほうのアモルは真実の愛が決まった時には、もはやいらなくなった弓矢を燃やしています。

・1758年に描かれたこの絵は「神々の愛」をテーマにしたもので、恋人たちの愛の誕生を描いています。とても大きくて美しい絵でした。

第1章「愛の神のもとに──古代神話における欲望を描く」から

「一方的な愛」

★セバスティアーノ・コンカ《オレイチュイアを掠奪するボレアス》1715年―1730年ころ。18世紀イタリアの画家

・左側が北風の神 右が人間のアテネのオレイチュイア王女

・嫌がるアテネのオレイチュイア王女を力ずくで連れ去ろうとする北風の神・ボレアス。古代神話では神々は気に入った女性を誘拐するエピソードは定番のテーマだそうです。

ルネサンス以降の神話画では男性の欲望が数多く描かれています。

第2章「キリスト教の神のもとに」から

「親子愛」

★サッソフェラート(本名 ジョヴァンニ・バッティスタ・サルヴィ)

《眠る幼子イエス》 1640-85年頃

・宗教画では神話画などとはまた違う愛が表現されています。

・それはまさに無償の愛ですよね。神が人間にそそぐ愛、人間が神に寄せる愛(信仰心)は聖家族,キリストの磔刑、聖人の殉教などに描かれています。

聖母マリアの幼子イエスを見つめるまなざしがまさに無償の愛でしょう。

・我が子がいずれ人類の罪をあがなうために十字架にかけられる運命を予感出来、憂いを感じさせます。

・キリストの受難はルネサンス以降度々描かれるようになりました。

 

第3章「人間のもとに──誘惑の時代」から

「官能的な愛」

★ジャン=オノレ・フラゴナール《かんぬき》(1777-78頃)

・この展覧会の超目玉作品。18世紀フランス絵画の至宝とされ、26年ぶりの来日。

・ドアーにかんぬきをかけようとする男性。

・女性は嫌がっているのか、身をゆだね陶酔しているのか?画家・フラゴナールの特徴は「あいまいさ」とか。

・いくつか暗喩(メタファー)があります。

かんぬきは(男性性器の暗示)

壺とバラの花は(女性性器・処女喪失の暗示)

テーブルの上のリンゴは、アダムとエバの原罪。行く末を警告している?

乱れたベッドなど、愛の営みを象徴する事物が並んでいます。

・どっちなの~?快楽主義~?原罪~?それは見る人が決めることって~~~?!(笑)

・18世紀のフランスでは現実世界に生きる人間たちの愛が盛んに描かれるようになり、情熱と欲望に駆られた人をテーマにしました。

 

「エロティックな愛」

★フランソワ・プーシェ《褐色の髪のオダリスク》1745年

・誘惑するようなまなざしで振り返っています。

・トルコ風のソファー、ここはハーレム?

・彼女のふくよかなお尻

・挑発的なエロティシズム

・18世紀、イスラム世界のハーレムに抱いた幻想を下敷きにしているそうです。   

 

第4章「19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマン主義の悲劇」から

「同性愛?」

★クロード=マリー・デュビュッフ《アポロンとキュパリッソス》(1821)

アポロンと美少年キュパリッソスの愛の神話をテーマ。

・可愛がっていた牡鹿をうっかり殺してしまい、悲嘆に暮れるキュパリッソスの頭をアポロンが優しく支えるシーンが描かれています。

・この物語は19世紀フランスの新古典主義で取り上げられました。

 

「ピュア―な愛」

★フランソワ・ジェラール《アモル とプシュケ》、または《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》(1798)

ローマ神話の愛の場面を描いたもの。

・若く美しい愛の神アモルは人間であるアテネの王女プシュケの美しさに心を奪われました。

・二人の恋は神の愛と人間の魂が試練を経て幸せを得るという物語です。

・初々しい青春そのもの。

・陶器のようなきれいな肌。

・蝶はギリシア語でプシュケ、魂の化身とみなされています。「愛(アモル)が魂(プシュケ)に触れた」ことの暗喩(メタファー)。

・2人は結ばれますが、美貌で知られる王女プシュケは、そのたぐいまれな美しさに嫉妬する義母ヴィーナスから様々な意地悪をされ、それを乗り越えてハッピーエンドを迎えます。

・嫁と姑の関係は元祖嫁姑問題?!

今回は美しい絵のオンパレード!しばし時代を超えて時のたつのも忘れてうっとりと魅入りました。

奈良国立博物館「聖地南山城―奈良と京都を結ぶ祈りの至宝」展に行ってきました~♪

南山城は京都南部、木津川に沿って広がるところ。

15世紀応仁の乱で焼け野原になった都からは離れた地域ゆえに、戦禍からまぬかれました。そこには山あいの寺々で守られて来た信仰と仏教の至宝が数多く残っています。

また古都・奈良と木津川をはさんで隣接しているこの地域は聖武天皇が一時は「恭仁京」を置いたことでも知られています。

 

この展覧会は聖武天皇恭仁京の造営から始まり、江戸時代に念仏を南山城で広め、活躍した人までこの南山城で花開いた仏教美術を時代ごとに展示しています。

 

ずっと前、南山城の仏像巡りに友人と二人で行きました。想い出深い仏像にまた再びお会いできることにわくわくしました。

 

私の見どころは順不同ですが・・・

  • 浄瑠璃寺 国宝 阿弥陀如来坐像(九体阿弥陀)およそ110年ぶりの保存修理の完成を記念して、そのうちの2軀を修理後初公開。ピカピカに磨き上げられ、いっそう神々しくなっていました。

  • 浄瑠璃寺 重文 本尊・薬師如来坐像十二神将立像は140年ぶりに里帰りし、再会しました。はじめてお目にかかることに興奮気味。

     

     





  • 京都・薬師寺和束町]重文 薬師如来坐像と蟹満寺 重文 阿弥陀如来坐像はそっくり。よく似たふたつの如来像がそろって展示されるのは初めてとか。

    足先を着衣でおおうところや、左足が上になっているところが似ています。


  • 京都・常念寺[精華町]重文 菩薩形立像 神仏習合の過程で生み出された菩薩形の薬師像。私の心の中はいつも「神様、ほとけ様」と拝む神仏習合なのです。

  • 京都・海住山寺 重文 十一面観音立像 古来より観音信仰の聖地だったことを物語る奈良時代の仏像に倣(なら)った表現が見られるとのこと。

  • 京都・海住山寺 重文 四天王立像は1214年作、今も色鮮やか。見事な彫技。

  • 神童寺 重文 愛染明王像は智証大師円珍の本尊と伝わる。弓と矢で星々の光を射抜き、人々に正しい道を教えてくれる天弓愛染の彫像は少なく大変貴重。修験道霊場である神童寺に伝わっている。

    神童寺 重文 不動明王像は別名「白不動」と言われ、全身真っ白のお姿。智証大師円珍の念持仏と伝わる。可愛い!膝小僧を見せてやんちゃなお姿。


     

  • 京田辺市・寿宝寺 重文(左)降三世明王立像、(右)金剛夜叉明王立像は密教尊の五大明王のうちの2軀。

  • 京都・朱智神社 京都府指定文化財 牛頭天皇立像(ごず天皇立像)外部からの邪気の侵入を防ぐ目的で本像を安置したらしい。初めて見ました。小さくても天皇様。

  • 京都・禅定寺[宇治田原町]重文 十一面観音立像は堂々としたたたずまい。意志的な表情は奈良時代の乾漆造の仏像のよう。

  • 京都・大智寺 重文 文殊菩薩騎獅像は快慶作・安倍文殊院(あべのもんじゅいん)の文殊像にそっくり。さもあらん、このお像を手本としているそうです。奈良時代行基の架けた泉大橋の材を使って1318年に橋柱寺の本尊を作ったという縁起絵巻も展示されていました。

  • 京都・現光寺 重文 十一面観音坐像は断然ピカ一の美仏!引き締まったからだ、動きのある衣文。南山城と言えばこの仏像!!!私の一押し!

    朝一番、9時過ぎに並んで入場、ランチをはさんで2時半まで仏像に魅入りました。何年振り?ゆっくり仏像三昧が出来ました。

ずっと以前、南山城に行った頃は秘仏が多く、拝観日は限定でした。指定日めがけて何度も通いました~。祈りのよりどころとなった至宝に、今こうして360度拝観でき、ほんとに嬉しいです。