今年(2024)は辰(龍)年
まずは龍図をご覧下さい。
★長沢芦雪筆《龍・虎図襖》重要文化財 和歌山 無量寺蔵 江戸時代 天明6年(1786)
大胆の中にもふわふわの毛並みをご覧あれ~!
令和6年(2024)の干支、辰(龍)は、十二支獣の中で唯一想像上の動物です。
もともとは古代中国の豊かな想像力の産物ですが、その姿は東アジア全域に受け入れられました。
長沢芦雪(1754 – 1799)をご存じでしょうか?
江戸時代に活躍し、奇想の絵師として知られています。
もしご存じでしたら美術史にとても詳しい方ですよ~。
芦雪生誕270年を記念して、今回新たに見つかった作品《蕗図》や重要文化財4件を含む約100件が展示されました。
芦雪と同時代に活躍した、奇想の画家と言われている絵師とは、奇抜な発想の曽我蕭白(そがしょうはく)(1730 – 81)、卓越した画力の伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)(1716 – 1800、そして長沢芦雪です。
芦雪が活躍したのは、江戸時代中・後期頃。
その頃京都で大活躍の画家は目白押しでした。
例えば圧倒的に大人気の写生の円山応挙です。
★円山応挙 国宝《雪松図屏風》私一押しの応挙の最高傑作(展示なし)
★曽我蕭白 重文《群仙図屏風》(部分)(展示なし)
蕭白(しょうはく)の代表作のひとつ。仙人たちの顔の表情はなんとも奇妙、奇怪。
この絵、結婚のお祝いだそうですよ。
★伊藤若冲《象と鯨図屏風》(展示あり)
勢いよく潮を吹く鯨と鼻を高々とあげた象が 呼応しているかのよう。 白象の三日月型の目と 卵のような形の耳、不思議な組み合わせでしょ?!
芦雪はどんな人~?
芦雪はこの時代に最も有名な円山応挙の高弟の一人です。
初期の芦雪は師匠そっくり!
★芦雪《牡丹孔雀図》江戸時代 18世紀
★応挙《牡丹孔雀図》江戸時代 18世紀
32歳の時、忙しい師の名代として南紀へ出掛け、半年ほどのびのびと描くことで自分の画風を確立しました。
写実的な応挙の絵とは違い自由奔放で大胆な絵になりました。
奇想の天才絵師・芦雪が得意とした作品
①障壁画(襖絵)
無量寺(和歌山)、 高山寺(和歌山)、西光寺(島根)、薬師寺(奈良)、大乗寺(兵庫)の襖絵8作品が揃って出品されるのは23年ぶりだそうです。
★《龍図襖》(昇龍図)松江市指定文化財 天明6年(1786)以前 島根 西光寺
★《寒山拾徳図》和歌山 高山寺 県指定文化財 江戸時代 天明7年(1787)
幅160センチの大画面に 豪快に描かれた作品です。
髪や衣の力強い筆さばき、そしてこの笑顔。
愛らしい動物たちがいっぱい。
生き生きとした動物たちの会話が聞こえてきそうな芦雪ならではの動物の描写
誰もが胸キュンするような可愛らしい子犬たちなど
通路の壁には~
★《梅花双狗図》江戸時代 18世紀 個人蔵
★《降雪狗児図》江戸時代 18世紀 公益財団法人阪急文化財団 逸翁美術館
★《群猿図》重要文化財 江戸時代 寛政7年(1795)兵庫 大乗寺
③奇抜な発想と構図
★《蹲る虎図》
巨体を丸めて蹲る(うずくまる)虎を描いた作品。 代表作の《虎図襖》とは異なり、尻尾は力なく垂れています。
「うずくまる虎」がクッションになりました。
★《方寸五百羅漢図》2010年発見の3センチ四方に500人の羅漢が描かれています。
★《蕗図》蟻の行列がフキの茎を登っていきます。
今回の新発見作品は、驚くほどミクロの細密画。そのため、展示では拡大画面で技法や繊細な筆遣いを観る工夫がしてありました。
- ユーモアのある大胆な作風
★《牛図》江戸時代 18世紀 鐵齋堂
★《群猿図》(部分)重要文化財 江戸時代 寛政7年(1795)兵庫 大乗寺
★《富士越鶴図》江戸時代 寛政6年(1794)個人蔵
芦雪に関する新しい説が~発表されました。
芦雪の生涯は応挙に破門されたとか、大阪で毒殺されたといううわさが付きまとっていました。
今回の展覧会で福田美術館の岡田さんから新説が発表されました。
「芦雪は、独自の展開を遂げ、他の応挙の弟子と画風が大きく異なることから、従来は、師・応挙と対立していたとも考えられてきましたが、芦雪の「魚印」六角形のような縁取りは「氷」で、氷は応挙を意味し、その後、応挙との決別の証に「魚印」の右端を割ったと言われています。
しかし、応挙への反発と捉えられていますが、応挙様式(応挙の型)を破る、応挙からの独立を宣言する意味ではないかと考えています」